小説用のメモです。恋愛の一番面を切り取る形で少しずつ書いていきます。
風の誘い
午後の時間 2時間の講義
ふたつ斜め前にあなたは座る
窓からの風が心地よい
風があなたを通過し私の元へ届く
あなたの香りを私に運ぶ
講義の内容はわからない
みんなは席をつめて座り、あなたが一番後ろ
そのさらに後ろに私が座る
後姿とも横顔ともいえないあなたの姿
ただ、あなたを見つめ
ただ、あなたに思いをはせる
風が運んだあなたを感じながら午後のひと時を過ごす。
この思い届きますように
暗がり
いえない
夕方の通路
帰り際に居合わせたあなた
「帰るの?」って声をかけたら「約束してる」って。
「誰?」って聞いたら少し変な顔をして、
「友達」って
俺も変な気持ちになった
言えないのか、言いたくないのか、知られたくないのか
あなたに彼がいることは知っている
約束の相手が彼であることも
もし、良い意味で言えなかったのならうれしい
大丈夫、あなたへの気持ちは変わらない
いごこち
夜の通路
明かりも消えて月明り
居合わせた私たち
たぶん偶然ではない
疲れたと言って私の肩に頭をのせるあなた
そのまま歩く私たち
眠たくなったと言って腕をまわすあなた
「このまま寝ちゃおうかな」
そのことばに答えたくなる
このままときを過ごしたいと思った
朝の出会い
ある朝
いつものコース
いつものジョギング
たまたまあなたが通りがかる
自転車から颯爽と降りるあなた
自転車のままでよかったのに
たぶん同じペースで走れるよ
朝のひととき 並んで歩く
あなたとふたり
朝日を浴びながらたわいもない会話
このひとときが良い
ある朝2
おなじコース
いつもの時間
あなたが後ろから追いつく
追いつくあなたは少しだけダッシュした
なかなか速いでしょ?
今度は走りながら
一緒に朝の時間を過ごす
選手とマネージャーみたい
すごく心地よい
また一緒に走りたいな
ある朝3
走り終えた私
少し汗を流し体を冷やす
自転車で駆け寄るあなた
暑いと言いながら汗を拭く
滴る汗を目で追って、膨らんだ胸にうつす
少し息が上がって上下する胸を汗が流れる
目を戻し笑顔のあなたがいる
しばしの会話
このひとときが続いてほしいと思った
恋占い
目覚ましがわりに携帯のアラームが鳴る
布団に携帯を持って入るのは依存症ではない。耳元で鳴らないと起きられないのだ。
すぐには体が起きずにしばらく画面を眺める。
SNSもチェック。私は珍しいインスタ民だ。Twitterは見るだけ、lineも連絡用。
インスタのストーリーをいくつか眺めてからメールチェック。
定期受信は今日の占い。星座占いは楽しむだけ。運勢が十二種類に分かれるとは思わない。でも、都合がよい結果は信じる。
ページの下までいくと相性占いのリンクがついている。
なんとなく押してみる。
私の生年月日。
相手の生年月日。
星座の相性占いとは違う。
星座では誰かは分からない。
生年月日は自分を騙せない。
想いを寄せたあの人。
好きな人でなければ誕生日まで知らないよ。
相性占いのとき、入力した数字で自分の気持ちが分かる。
この人が好きなんだね。
結果のボタンを押して待つ。
最高の結果。めぐり合わせた運命の人。
いつもより遅くなった。ご飯を口に運び、スープで口直し。
パンを咥えて走ったりしない。玄関からダッシュ。
入り口で想い人に会う。
たわいのない会話から占いの話。
相性占いのサイトだけ教えておいた。
心の中で願う。
あなたが私の生年月日を入れてくれるのを。
聞いてこない。知っている?相手は私じゃない? どっちだ。
ちらりと携帯を見られた。
「テストでいい点でも取ったの?」
「テストじゃないよ。」
いい点は確かだけどね。
私の今の待ち受けはあなたとの相性なんだよ。
鳥籠
アラームが鳴り響く。15分もの間鳴りやまず鳴り続ける音。早く止めればいいのに。
私はひとり起きて鳥に水を上げる。エサはまだたくさんある。
家族と言うのは複雑だ。家とはカプセルホテルのようなものかもしれない。
起床時間はバラバラで各々が目覚ましのアラームをセットする。一緒に寝れば最初のアラームで起きてしまう。みんなが同じ生活をするわけではない。かと言ってみんなが別々の部屋で過ごせば家族とはルームシェアしている他人となんら変わりがない。
親とは育ての親である。血がつながっていることが親ではない。
血がつながっていても、血がつながっていなくても、私の親は親でないことを悟ってしまった。私を育てたのは誰か。
私は家を出ようと思っている。自分の時間と自分の幸せが欲しいからだ。
私は親が嫌いだ。そんな素振りは見せたことがない。だから親は私の気持ちなど知らない。自分が正しいと決めつけ、それを押し付けるそんな親が嫌いだ。あなたの幸せを思ってなんてことを言いながら、世間体や自己満足を押し付けてくる。私の幸せをあなたたちが知っているわけがない。子供に気を使われたら親としては終わりだと思う。子供には親をはねのける権利がない。私は幸せになりたい。私が思い描く幸せを。他人と違ったとしても私が幸せと感じる未来を。
鳥かごの扉を開け、バルコニーの扉も開けてみた。飛び立つなら今だよ。
外の世界は厳しい。鳥かごの中にいれば、ご飯も水ももらえる。何不自由なく生きていられる。生きるだけなら何も問題がない環境だ。外に出れば自分でご飯も水も手に入れなければいけない。住む場所もそうだ。生きるのは大変だ。
鳥は鳥かごを抜け出し部屋を飛び回った後、バルコニーから外に出た。何度も家の周りを旋回していた。別れを告げているのか、戻る場所を確認しているのか、育った場所を目に焼き付けているのか。そして去っていく鳥を眺めた。生き残れるか分からない厳しい世界へ飛び立った。
私は家を出ようと思う。幸せを手に入れるために。
これからいろんな恋をする。そのセリフが嫌いだ。
私の恋は一度で良い。たくさんの恋をしたいわけではない。
その一度の恋のために私は家を出る。
生き残れるか分からない厳しい世界へ。
人狼
大人はみんな嘘つきだ。
彼を除いて。
気づかなかった。彼以外が嘘つきだなんて。
私は裏切ってしまったのか。
すべての人が嘘つきならば誰が真実を決めることができるのか。
一枚の紙がある。
方面に表、もう片面に裏と書かれている。表はどっちだ。
一枚の紙がある。
両面に表と書かれている。裏はどっちだ。
みんなが嘘をついてる。真実はなんだ。
彼だけが真実を話してくれる。私を騙したりしない。
彼が未来をあきらめていないなら、私は彼とともに未来を信じる。
人狼と狂人だらけ。私は村人で彼は狩人。
ゲームはラスト1ターンの夜だけ。勝利条件は彼が私を守ること。
このゲーム、この人生は私たちの勝ちだから。
ふたりだけの世界で生きていける。
ブーケトス
披露宴のブーケトス。いろんな形がある。基本形は花嫁が後ろ向きに招待客に向けて投げるのだが、それぞれの思いがいろんな形を作り出す。
次の人にバトン代わりとして、投げずに手渡すのも一つの手段だ。
投げたブーケを必死に取りに行く姿が必ずしも美しいとは思われない。結婚に必死と思われるのも嫌だし、かと言って誰も取りに行かずに床にでも落ちたら花嫁に悪い。
私たちが選んだ方法はくじ引きタイプだ。ブーケの紐を引くタイプ。
これなら無理に取りに行ったりすることもなく参加しやすい。当たりの要素が大きいから単に占い気分で引いてくれても良い。
何よりブーケを渡す人に背を向けなくて良い。引いた人の表情が見えるのは楽しい。
いまは披露宴の打ち合わせに大忙しだ。いろんなアイディアを出して心に残したい。
当日だけでなく、決めているこの時間も記憶に残したい。
五感
視覚
私より少しだけ大きな手。
小さな顔。
白い肌。
いつも笑顔のあなた。
笑った顔が好き。
恥ずかしそうに近づいてくるあなた。しおらしい姿が好き。
去り際のあなた。悲しげな表情をする。もっと一緒にいたいと思う。
待ち合わせのあなた。見つけた時の表情の変化が好き。
友だちを思い震えるあなた。あなたのやさしさを感じる。
私を見るあなた。女性の目をする。そんなあなたに惹かれる。
元気なあなた。はしゃぐ姿にエネルギーを感じる。
寄り添うあなた。愛を感じる。
私しか知らない表情。誰にも譲りたくない。
聴覚
あなたの声。優しい声。
悲しさに震える声。
胸に抱いたときの息遣い。
待ち合わせで近づいてくる足音。
あなたの胸に顔を寄せたときの胸の鼓動。あなたが生きている証。
楽し気に話す声。
ずっと楽しませていたい。
触覚
柔らかいあなた。
女性の柔らかさを持つ。
抱き締めたときのか弱さ。
手を繋いだ時の力強さ。切なさ。
ソファの上で私に跨るあなたの重み。心地よい重み。
そのまま体を預けるあなた。あなたのすべてを感じる。
両腕で抱えたあなたの重み。あなたのすべてを支え愛しいと思う。
なめらかな肌。
すべてが愛おしい。
味覚
あなたの頬に口をつける。
味ではなく気持ちを感じる。
キス。
深く長いキス。
お互いが求めるなら生物として相性が良い。
わたしたちは相性が良い。人間としても生き物としても。この上なく相性が良い。
わたしたちは気づいている。お互いを求めていることに。
嗅覚
私の胸にあなたの頭を置いたとき、あなたの香りが好き。
汗のにおいと髪のにおいが混ざり合ったあなたのにおい。健康的で女性的なにおい。
わたしのにおいが好きと言ったあなた。生き物として結びつく私たち。感覚で私たちがお似合いだと分かる。
あなたの手の匂い。不思議なにおい。
女の子の髪のにおいはシャンプーの香り。体は洗剤の香り。その香りの奥にはあなたの香り。
あなたの香りに埋もれていく。
わたしたちは気づいている。お互いが最良の相手であることに。
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