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恋愛小説

恋のメモ4:2分で読める恋愛小説ショートショート

ハートの花びら 恋愛小説
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宛先のないプレゼント

春の時期を迎え、朝晩の肌寒さが薄れてきている。

3月末から4月初旬は引っ越しのシーズンだ。日本のシーズンの節目になる。学校というシステムが社会人にも影響している。

学生は卒業を迎え、新たな学生または社会人として生活の場を移す人もいるだろう。社会人もまた新たな環境に身を置く人たちがいそいそと準備を進めている。

私も例にもれず、新しい環境に身を置くべく準備を進めている。やっと自立できる。そう思ったのは昨年の末だった。新たな住処を用意したのは仕事を始めるためだ。事務所兼居室として住む場所を探した。

お金もないので引っ越しのお祝いもなにもない。祝う以前にこれからの生活に不安と緊張を抱いている。

荷造りをしながら古びた袋を発見した。小さな紙袋だ。もちろん中身は覚えている。

その小さな紙袋を手にした時のことを思い出していた。

あれは仕事の途中だった。

現地視察ということで、朝から空港に私はいた。始発の電車を乗り継ぎ空港に着いた時にもまだ人気が少なく、お店も開いていない状態だった。それでも空港のロビーは明るく活気を感じた。

航空券を手に、手荷物を預け、Departureと書かれたゲートをくぐっていた。

出発ロビーで紅茶を飲むのを堪えながら冷たいお茶を飲んでいた。飛行機は苦手だ。離陸と着陸で酔ってしまう。電車やバスのように立って乗れたら酔わないのに。

飛行機の座席の姿勢がものすごく嫌いだった。

出発時間になり、飛行機に搭乗する。この空港は新しい。とはいっても真新しいわけではない。

昔はもっと近い空港が主に利用されていたが、住宅街にあるので、離陸と着陸の角度が急であることと乱気流が起きやすく苦手意識がついてしまった。一時期、着陸に失敗した航空機の残骸が端に寄せられ、離陸直前にそれを眺めながら飛び立つのが恒例だった。

今は海を埋め立ててできた空港なので海風はあるが角度が緩やかであることと風が安定しているので、それほどでもない。

今回も無事に飛び立ち、少し汗をかいただけで済んだ。飛行機は南に向かった。

飛行機からの眺めをそれなりに楽しみ、滅多に乗らない飛行機の雰囲気を感じていた。

着陸して飛行機を降りると蒸し暑かった覚えがある。

1泊2日の視察は強行日程だった。ビーチを幾つも見て回った。ビーチで遊ぶには季節外れだが、そもそもビーチで遊ぶ時間がない。ビーチを眺めてジュースを飲むのがせいぜいだった。

ただの視察だった。

一日目はビーチを見て回り、ホテルで夕食。これが唯一の楽しみだった。2日目は観光地を見たが、それほど印象に残ってはいない。仕事でなかったら行きたい場所を確認し、好きな人を連れて来て一緒に回りたいと想像しただけだった。

予定の日程を消化し空港に戻ってきた。たまたま出発までに時間があってお土産をみて回った。お土産を買う相手などいないのに。

そのときに手にしたお土産がひとつ。この先、自分に好きな人ができ、その人に自分の想いを伝えるときに渡そうと。あなたに本気だよって。大切なんだよって。

そのときの紙袋がまだ手元にある。もしかしたら、このまま誰の手に渡ることなく終わるのかもしれない。

そのときは私のものだな。

このプレゼントは宛先のないプレゼントだ。行先のないプレゼントではない。

またひっそりと私にくっついて、プレゼントは引っ越しを始めた。

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運命のワルツ・運命の輪舞

運命の輪は回り始める。

私は夢を見ていた。

フォークダンスを踊っている。

輪になって曲に合わせて踊るのだが、内側と外側で逆に回り、相手が順に交代していく。

最初は曲に気をとられて相手を見ていなかった。

変わった相手を見た時に付き合った元彼だと気づいた。

踊りながら順に交代していくのだが、付き合った元彼が付き合った順に出てくるのだ。

一番最初の人の顔を見そびれたことを後悔した。誰だったのか気になる。ただ、父親に似ていた気がする。

誰しも女の子の初恋の相手は父親なのかもしれない。

曲が流れ終わり、最後の相手が現れるはずだった。

なのに、私だけ相手がいなかった。

あれ?同じ人数で踊ってるんじゃないの?

みんな相手がいる私だけ相手がいない。

不安になって寂しくなった。

誰かが私の隣に来た。

シュンと悄気ている私の手を取ってくれた。

最初の彼だった。父親ではなかった。

顔が見えない。なのに最初の彼だと分かる。

再び曲が流れる。これが最後の曲であることも分かる。

そして、この曲は相手が変わらない。

彼が私の手を取って踊りながら歩く。

急に周りの人がいなくなった。

曲が終わり、私たちは向かい合った。

私は戀をした。

心、惹かれ、乱され、繋がった。

彼とつながった。

つむぎつむがれつながった。

戀しいと言う気持ちを知った。

目が覚めた。夢がなにを表したか、私の気持ちを知りたくて、もう一度目を閉じた。

彼に会いに。

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恋の種

私たちは恋の種を蒔いた。

種に水をあげた。

恋をするとは思っていなかった。

いつもそうだ。確かに見た目で可愛いとか思うことはある。ただ、最初から恋をするとは予想できない。

時折、会話する程度の仲だった。

思い返すと最初は全く話さなかった。自分は人見知りだと思う。最初は何も話せない。

数か月経ってようやく周りの人と話せるようになる。この数か月っていうのは、長いと数年になることもある。

学校の授業と同じ。たまたま同じクラスになったとか、たまたま隣の席になったとか。

社会人になってもきっと同じだと思う。たまたま同じプロジェクトになったとか、たまたま同じ部署になったとか。隣の席になったとか向かいの席になったとか。

ひとりでいる方が気が楽なので、ひとりで黙々と仕事をこなす。

外に出ては、たまに戻って事務作業をする。そんな仕事だ。割合は半々より事務作業少な目が好き。自分で決められるわけではないが、デスクワークに偏るのは苦手だ。

そんな状態なので、内部の話がなかなか聞こえてこない。

すこし緩んだ雰囲気の時にちょっとだけ会話をした。周りの雰囲気を聞きたかった。

そこから少しだけ話かけるようにった。良い話も悪い話も、何気ない日常も。

少しは仲良くなれた気がした。

とある日の作業中に歌を口ずさんでいた。もちろん声には出していないが、口パクでけっこうノリノリで歌っていたのを見られた。

こちらを見てほほ笑んでいた。ちょっと恥ずかしい。

照れながら、笑ってくれたことに安心した。

また別のある日、周囲の会話が耳に入ってきた。

内容に「え?」って思いながら顔を見合わせた。

ふたりで何も言わずふふっと笑った。

同じことを考えたことが分かった。

こうやってふたりにしか分からないことで何かが伝わるのは嬉しい。

これが積み重なり、ふたりだけの世界が作られ、いつしか仲を深めていく。

まだ恋ではない。

恋に育つにはもう少し、日の光と水と時間が必要だと思う。

日の光は周りの環境

水はふたりの気持ち

時間は時の流れ

育つかどうかはこの3つにかかっている。

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世界に一つだけの花

私たちはみんな、世界に一つだけの花だけど、咲かなければ誰も見てくれない。

地下街のケーキ屋さんでケーキを頬張る私。

目の前には彼がいる。

彼は私を奥の席に座らせてくれた。そのおかげで店内やお店の外が見渡せて気持ちが良い。

「一口あげようか?」

「ありがとう。」

彼にあーんと食べさせてあげる。生クリームとモンブランが好きな彼だから、今日の私がチョイスしたバナナクリームパイはお気に召さないかもしれない。そういえばチーズケーキも好きだったかも。

「俺のもあげようか?」

「じゃあ貰おうっと」

彼はクロックムッシュを好んで食べる。ケーキ屋さんなのにこのお店の一押しはクロックムッシュらしい。

一口齧るとこんがりと焼けたトーストの触感と挟まれたチーズとハムの味が噴き出すように感じられ確かに美味しい。

彼に食べさせてもらって、周りの目を気にした。

イチャついているように見えるのかなぁ。

ちょっと気になったが、それはそれでかまわないようにも思った。

視線をあげると向かいの果物屋さんが目に入った。

向かいの果物屋でもケーキは食べられるのだが、席が少ないので今日は眺めておしまいになりそうだった。果物の他にケーキとフルーツジュースが売っている。

次は彼と行ってみようと思った。

お店を出て彼と果物屋を軽く見た後、斜向かいの紅茶屋さんに入った。彼がティーを好むのを知って、何度か足を運んだお店だ。

ティーの種類も豊富で茶葉の香りを楽しむ。お隣にあるお菓子をみて前にプレゼントされたものだと気づいた。もしかしたら彼が初めて私にくれたプレゼントだったかもしれない。

いや、プレゼントではなくて、初めて彼の家に行ったときにもてなしてくれたものだ。たしか、紅茶を飲みながら、珍しいお菓子だからって出してくれた記憶がある。

今日は何も買わずにウインドウショッピングになった。紅茶屋さんを出ると向かいの花屋さんの中を歩いた。

「花好きなの?」

「種類とか分からないけど、見るのは好きだよ。」

「好みの花は?」

「お前だよ。」

「はぁ?またすぐそう言いうこと言う。」

「私は咲いてませんよ。」

「俺から見れば可愛く咲いているよ。俺は咲いてんのかなぁ?」

「花ではないんじゃない。花っぽくないし。」

「じゃあ何?」

「とりあえずこんがり焼けてる。」

「花以前に何か分からんじゃん。」

そうやってふたりして笑った。

私や彼が咲いているかは分からない。ただ、私たちの恋は蕾が膨らみ、花を咲かせようとしている。

私たちの花の色や形はまだ見えてこないけど、咲いた時を楽しみに少しずつ花開くのを待つことにした。

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