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恋愛小説

こいねがう

ハートの花びら 恋愛小説
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希う

私はあの人と過ごす時間を希う。

ふたりで過ごす時間。

ふたりで同じ場所で同じ時間を過ごす。

周りに人がいても良い。

ふたりきりでなくても、ふたりでいれば自ずとふたりだけのじかんになる。

誰にも邪魔されない。

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乞い願う

もうすぐ、年が変わる。令和元年もあと少し。

大晦日の夜にテレビも見ずに勉強をしている。

昨年はテレビを見ながら年越しをしていた。男性アイドルグループの年越しライブを見ていた気がする。誰だったか急に画面から消えたと思ったら、歌いながらステージから落下したのだと気づいて驚いた覚えがある。

年越しに誰かにLINEでも送ろうかと思ったが、特に送りたい相手がいるわけではないのでやめた送りたい相手がいないは間違いで、送りたいけど送れない相手がいる。

そんなことを考えながら、毎年どんな年越しをしていたか思い出していたら、幼い頃の思い出にたどり着いた。

小さい頃は年越しと言えば初詣ではなく、除夜の鐘つきだった。初詣に出かける人たちとは違って、落ち着いた面持ちでお寺を訪れる。ひとりひとつき。一年に一度の鐘つき。煩悩を吹き飛ばすように精一杯。

そのまま夜のティータイム。幼い頃は年越しを起きていることだけで少し楽しく感じていた。

その名残か、今でも初詣は三が日が過ぎてからになってしまう。

今日も年越しまで起きている。勉強して起きているので寝てしまうことはないだろう。こうやって年越し勉強をするのは今年だけなのか、それとも毎年恒例になっていくのか。

時計を眺めてひとりでカウントダウンした。

「明けましておめでとう。今年もよろしくね。」

誰に言ったのか自分でも分からなかった。

誰に言ったのか自分だけは気づいてた。

年をまたいだことを確認して令和2年のスタートは早々に寝てしまった。

お正月の三が日はほどほどに勉強して、ほどほどにテレビを見て過ごした。友達ともあけおめのメッセージを数人にしただけで、送った数も送られた数もそれほどなかった。あの人からのメッセージもなかった。

お正月の食べ物は好き。三が日の朝はお雑煮を食べる。これが私の決まり。この日だけ少し濃い目に味付けをする、ちょっとした贅沢なのだ。1日と2日で味を分けるのも恒例。味噌と醤油。順番は変わるが毎年両方食べている。正月菜は小松菜。後は鰹節をまぶすだけのシンプルなものだ。

三が日が過ぎてようやく初詣に出かけた。お昼前に行くと神社には長蛇の列ができていた。元日はもっと混んでいただろうと思った。これでも年々人が少なくなっている。昔は何もしなくても人が並んでいたのに、いまではカラーコーンが並べられ、警備員がひとり立っている風景がなんだか寂しく感じさせる。

まずはお清め。右手、左手、口元と清め。柄杓を水で流し戻す。

列の後方に並んで知った人がいないか見渡した。不思議なことに、以前は必ず同級生や先輩後輩、同じ地域の人たちを見つけられたのに、最近では誰とも合わないことがある。今年も誰とも顔を合わさなかった。

列は順調に進み。お参りをする。

御祈願。

何を願うか今年は決めていた。

あの人の合格を乞い願う。

あの人が私の合格を願い続けているのを知っている。

自分も試験を受けるくせに、自分の合格祈願はしないんだから。それだけ自信があるのか、神様を信じていないのか。努力しなければ神に頼っても受からないとは思う。でも、少しくらい願えば良いのに。

あの人は努力家ではない。自分でそう思っているみたい。それは本人の感想であって本当はものすごく努力家なのだ。でも、努力を人に見せない。努力しててもそう見えないのがあの人らしさでもある。いつも余裕に溢れてる。

お賽銭を投げ入れ、2礼2拍手(心で願いを唱え)1礼。

お参りを終えて境内を回ろうか考えた。

本殿の横に回ると絵馬が飾られていた。合格祈願も多く書かれている。絵馬は書かずにみんなの願いを眺めて自分のやる気を高めることにした。

「よし、帰って勉強しよう。」

自分を鼓舞して神社の出口へ向かう。

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恋願う

踵を返し、歩き始めると正月の賑わい、境内の雰囲気に誘われなんとなく屋台を眺めて歩いてみた。

何か食べたくなったが、食べ物ではなく、目にとまった御御籤に手を出した。恋神籤だ。普通の御御籤でも良かったが恋に引き寄せられた。私は恋をしているのだと思い出した。

引くだけ引いて、内容を見ず財布にしまう。きっといいことが書いてあるよ。恋が叶ったら見てみよう。そしたら書いてある内容が何であれ楽しんで見ることができる。

思い出した恋をお供に屋台を見ながら境内を一周する。奥の方に池があり、そこは人が少なくひっそりとしている。私の秘密の場所。ときどき着物のコスプレをした人たちが撮影に来るが、お正月のこの期間は来ないだろう。池を見ながら歩いてみる。ふたりで歩くところを想像しながら。

もう一度、本殿に向かう。途中にある神馬のモニュメントを眺めかっこいいなと思った。私のところに神様を連れてきてほしかった。お願い事があるの。

先ほど並んだ列が少しだけ短くなった。後方に並び直し、願い事を整理する。

恋願う。

やっぱり私は恋をお願いしたい。あの人も私の合格祈願をしながら密かに恋の成就を願ったのかな?

2礼2拍手1礼。その間にしっかり恋の願いを込める。

この間、私はあの人との生活を慮った。

あの人との暮らし。

あの人との思い出。

あの人とのこれから。

一緒に食事したことを思い出す。とあるファミリーレストラン。そうか私たちファミリーだったんだ。そう思ったら急に恥ずかしくなった。

願い事を終えると今度こそ帰ろうと振り返った。

あの人がいた。目の前に。そう、最初から会えるのかもしれないと思っていた。あの人も三が日に初詣をする人ではない。このちょっとずれてる感じが私とシンクロする。

目が合ったときから周りの音が聞こえなくなった。ただゆっくりと近づく。お互いに。

そのまま抱きしめられる。何も言わないまま。会えなかった時間の分だけ、言葉が出てこない。

神社の端。人通りから外れた場所。はたから見たら何に見えるのかな?そう思ったのは数日後。このときはただ真っ白な感情でお互い抱きしめた。

黙って手を握った。この時間も長かった。

何を話して良いか分からないのに最初に出た言葉がお腹すいただった。

「何か食べる?」

「何食べたい?」

「お前を食べたい。」

「このタイミングでそんなこと言う?」

「このタイミングでも事実だし、このタイミングでお腹空いたと言われてもねぇ。」

「私を食べるのは後でね。」

「それは良いよって意味だね。とりあえずポテト食べよ?」

「ポテト好きだね。相変わらず。」

「ポテトとお前が好き。両方食べる。」

何だか変わってないことに安心する。

ポテトをふたりで分け合いながら、今までのことこれからのことを話した。

「受かりそう?」

「それはお互い共通の質問だな。」

「で、どうなの?」

「やればできる。そのレベル。やらなきゃ落ちる。そのレベル。」

「じゃあ気持ち次第?」

「いや、割ける時間の問題かな。そっちは?」

「難しいかなぁ。得意不得意が激しくて。」

「合格することだけが幸せじゃないよ。合格が目的でもないだろうし。目的は別のところにあるでしょ?」

「そうかもしれないけれど、目の前にある試験ってのはけっこうなプレッシャーだよ。」

「ふたりで幸せになれば良い。」

そのとき急に頭をこつんと叩かれた。

「何?」

「御呪い。」

「何の?」

それには答えず、今度裏切ったり苦しめたりしたら許さないよって言われた。

「寂しかったんだよ。不安だった。苦しかった。でも、信じてた。」

「だから、御呪い。」

立ち上がるとふたりで駅を目指して歩いた。お祭りのときは屋台が両側に立ち並ぶアーケード街もお正月はひっそりとしている。神社に行き交う人の多さだけが特徴だ。ふたりで何度か歩いた道をまたふたりで歩いている。

「神様っているんだね。」

「今日は神様に呼ばれたから来たんだよ。」

駅が近づいてくる。

「神様は真面目な人には味方してくれるから。」

駅に着いたら今日はお別れになるかもしれない。

「もうすぐ駅に着いちゃうね。」

「神様が味方してくれるから、今日の続きがあるよ。」

「帰りたくない。」

「その言葉が面倒なのに、たまらなく好きなんだ。だから、帰したくない。」

「帰りたくない。」

「一緒に暮らすか?」

その言葉を聞いて、今年は正月から縁起がいいやって思った。

令和2年は良い年になりそうだ。年明け早々こんな良いことがあるのだから、この先怖いくらい良い年になりそう。

冷たい空気を吸いこみ、済んだ空を見上げ、白い雲を眺めながら、この先のふたりの暮らしを慮った。

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補足というか

今回の内容は恋のメモの方で載せておこうと思ったんですが、恋のメモは短い話を複数載せるときにしているので、実際はメモなのですが、長くなってしまったので小説のほうにしました。

恋のメモ、恋愛小説ともに面白いものを書きたいなぁと思いつつ、面白いとは共感できるものかなと感じています。

読んだものの感想とか聞かせてもらえたら幸いに存じます。感想お待ちしています。

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